Agenda de tous les jours

残すためではなく気づくため。自身の省察のためのブログです。

RPD研究交流会

昨日、「RPD研究交流会」なるものに参加してきた。
まずRPDとは、日本学術振興会が平成18年から採用している若手研究者のための制度で、出産・育児による研究中断後に円滑に研究現場に復帰できるように支援するための、ある種「特別枠」である。
そのRPD採用者を対象に毎年開催されているのが、昨日行ってきた「RPD研究交流会」で、「研究活動における出産・育児の課題と今後の研究展望等についての意見交換とともに、先輩研究者による体験談も交え、他分野の特別研究員-RPDとの分野を越えた研究交流・情報交換の機会を提供すること」を目的としたものだそう(学振HPより)。
というわけで、信濃町駅近くの明治記念館で11時半に受付が開始。
昼食をとりながら学振のスタッフから参加者へ会の概要や注意事項などが説明された。
明治記念館って初めて来たけれど、入った瞬間、「あれっ!?想像と違う…」。
豪華絢爛というか、厳かなムードで、普通にスーツで来ちゃったけれど、もっとドレスアップすべきだったかな…と気にしだす(笑)。
昼食もお紅茶にサンドイッチがどさっ!!
もぐもぐしながら受付で配布された資料に目を通す。
パワポ1枚に自分の写真や研究内容について書いたものを事前に学振に送り、当日全員分閉じられたものも配られた(参加したRPDは26人)。
びっくりしたのが秒単位で会のスケジュールが組まれていること。
これも事前に知って多少びっくりしたのだけれど、毎年この会には秋篠宮妃殿下にも臨席いただいている。
会ではまず、RPD採用経験者が現在どのように常勤職のポストを得たのかについての経験談を話してくれた(2人の予定だったが1人はお子さんの事情で欠席)。
次に、各領域ごとに代表者が1名ずつ(計8名)自分の研究内容や育児と研究の両立について発表した。
何学の話なのかわからないくらい発表者の研究テーマが多様で、覚えているだけでも、脳の研究、ブラックホールに関する研究、iPS細胞に関する研究、子どもの保育に関する研究など、聞いていて面白かった。
その後、出席者の集合写真(後日郵送されるらしい)を撮って、立食形式のティータイムでRPD同士の意見交換の時間となった。
小さい丸テーブルを5人くらいで囲み、コーヒー、紅茶などの飲み物や、ケーキ、シャーベット、クッキーなどのお菓子を食べながら優雅におしゃべり。
そして、そのテーブル一つ一つを妃殿下が回られて、参加者一人一人の話に耳を傾けられた。
妃殿下は学振が作成した資料に事前に目を通され、参加者がどのような研究をしているのかを把握して参加されているという、なんとも恐れ多い…。
自分の番が来て、簡単に研究の概要について話させていただいたが、正直、自分の話なんてどうでもいいから、妃殿下がどのように三人のお子様を育てて来られたのかを伺ってみたかった気がする。
妃殿下が次のテーブルへ去られてからは、緊張もほぐれ、RPD同士で研究と子育ての苦労話に花が咲いた(笑)。
共通の苦労話はやはり保育園問題。
一定の収入はあれど学振とは雇用関係がない、という自分たちの立場がマイノリティすぎて、お役所の人にはなかなか理解してもらえない、ということを理解し合う。
誰かに何かを訴えようにも誰に何を訴えたらよいのかわからないというもどかしさも共有(政治家になれば変わるのかもしれないけれど、マイノリティすぎて数の論理の前では当選できないだろうと笑う)。
けれど、常勤職のポストを得てからの出産・育児は周りに迷惑かけてる感があったり、実際にポストが少ないような分野で産休・育休をとると、ポストの空きを待っている人による妬み・嫉みの対象となっていた事例もあったりで、なんだかなぁ…
カナダなどでは出産・育児を経ても研究に戻って来られるルートが確保されていたりするらしく、日本でもそれが当たり前になればいいのに…という参加者の声が聞かれたことも印象に残っている。
そしてそれぞれが日々どうやって研究と子育てを両立させているのかを聞けて大変刺激になった。
なんせ、周りに自分と同じような境遇の人はほとんどいないので。
会に参加してみて特に印象に残っているのは、RPD採用経験者の方のお話。
その方は、「どの様な気持ちと方法でRPD期間、研究と育児の両立をめざしたか?」というお話の中で、ネガティブな自分とポジティブな自分とがいたことを話してくれた。
ネガティブさんは、「研究は私でなくてもできる…」「子どもにとっての母親は私だけ…」「研究も育児も中途半端なダメな自分…」と考える。
逆にポジティブさんは、「いや、この研究は私だけしかできない!」「私がやらないで誰がやる!?」「私がやりたい!」「研究も育児もやる!やるしかない!」と考える。
これ、まさに今の自分。
その方は、なるべくポジティブな自分でいられるように、体調管理と精神管理の大切さも話してくれた。
体調管理としては、「無理をしない」「サプリメントで補う」「月に数回マッサージを受ける」「女性ホルモンのリズムにあわせる(多少無理がきくとき、リラックスが必要な周期を把握)」を挙げていた。
特に最後のは共感できる。
二人出産してからというもの、生活リズムはもちろんのこと、身体も以前とは全く違う。
月一の女の子ウィークは、外出することすらほとんど不可能になった(前はそんなことなかったのに)。
さらに精神管理として、「書き出して見通しを立てる!←漠然とした不安・心配がストレス」「やらなければならないことを書き出し、終わったら消す!←達成感は大事」「子どもはいつか自分から離れていくことを忘れない」を挙げていた。
これも最後のは「そうだな」、と共感した。
毎日怒涛の子育ての日々を送っていると、自分のかけがえのない子ども達がいつか自分の手を離れていく、という子育ての一過性を忘れがちになる。
どんなに忙しくてもこのことを忘れないことで、子育ても研究も貴重なひと時であるということを意識することで、ポジティブな自分を保てそうだ。
毎日、孤独に資料やパソコンとにらめっこしている自分にとって、やはりこうした会はとても良い機会となった。
RPDに採用される人なんてどうせ、授乳しながら論文読んじゃうくらいのスーパーウーマンなのかと思っていたけれど、そういう人達ばかりではないと思えた。
遅々として進まない研究を前に、時に「どうせ自分なんてたまたまRPDという宝くじに当たっただけの人間なんだ…」と劣等感に苛まれているような自分にとっては、同じような悩みを抱えていた人の話が聞けて大変励みになった。
そして、研究を進める上で一番大事なことは、母子ともに健康でいること(もちろんメンタル面も)。
結局これにつきるのではないか、と母になって5年が経過し、改めて思った。