Agenda de tous les jours

残すためではなく気づくため。自身の省察のためのブログです。

連続テレビ小説『おひさま』

この春からNHKで放送されている,連続テレビ小説『おひさま』を見続けている。
最近は,タイムリーに見られなくてもインターネットの動画サイトなどでも見られるようになっているので,時間があるときにまとめて視聴できるから非常に便利である。
『おひさま』は,ヒロインの陽子に井上真央を起用し,信州・安曇野と松本を舞台に,戦前,戦中,戦後を生きぬく一人の女性の一代記を描いている。
見始めたきっかけは,物語の舞台が自分の祖母が暮らす信州・安曇野であるということで,最初は単に懐かしい風景だなぁと思いながら見慣れた景色や耳慣れた方言を楽しんでいた。
主人公の陽子は幼少期に母親を病気で亡くし,二人の兄と父親の四人家族でたくましく暮らしていた。
小学校卒業後は女学校に通い,その後は小学校教師になるため師範学校に通う。
陽子が小学校の教員になったのは,尋常小学校から国民学校へと変わった年で(1941年),時代が進んでいくにつれて日本は総力戦体制へと突き進んでいき,小学校でも軍国主義教育が本格化していった。
戦中の一教員の葛藤や,都市に比べたら比較的戦禍を免れていた地方の人々の暮らしぶり,一般の国民(民衆)がどのように戦争と向き合い参加させられていったのかが非常にリアルに描かれているように思う。
特に,最愛の家族を戦争に送り出す側,すなわち彼らの帰りを待つ側の心情や,戦争で両親や兄弟を失った子どもたちがどのように少国民育成の場としての学校に通っていたのか,という「終戦を待つ側」の視点で戦争の実態を映し出す作風は,これまでの戦争を扱った多くの作品の中でも妙に新鮮に映る。
この作品を通して,改めて「なぜあんな戦争をしたのか」ということと同時に,「なぜもう少し早く終わらせることができなかったのか」ということを考えさせられる。
今週の放送では1945年8月15日を迎え,ようやく戦争が終わったときの人々の様子,その後の小学校における「墨塗り教科書」とそれを子どもたちに指示しなければならない教員としての陽子の葛藤,戦争で傷心した兄を迎え入れる家族の様子が描かれていた。
印象的だったのは,自宅のラジオで玉音放送を聞いた後も何が何だかわからず熱を出して寝込んでしまった陽子が夜に起きてきて,家の中や街に灯りがともっている様子や,街に電車が走っている様子を見たときに,「あぁ,戦争が終わったんだな」と実感したときのこと。
主人公の陽子からすれば,物心ついた時から日本は戦争をしていて,ずっと連戦連勝できていたがゆえに日本の「負け」をすぐには受け止めきれなかったのだという。
しかし終戦日の夜,家や街に明かりがともるというそうした何気ない変化,あるいは元の状態への復帰が,戦争の「終わり」というものを徐々にそうした国民に認識させていったんだな,と思った。
先日,とある研究会で「いつまでが戦後か」といった議論がなされたが,来週からの放送ではそうした戦後の一局面が描かれるのだろう,と期待している。